・世界各国の告知率
癌(ガン)告知率が以前から高いのは、オランダ、フィンランド、オーストラリア、米国、デンマークなどで、
北欧や北米の諸国が多いようです。
宗教的に見ると、プロテスタントやユダヤ教の国で告知率が高く、イスラム教、仏教、ヒンズー教などの国々は低い傾向があるといわれていました。
・日本も年々増加中
最近、『インフォームド・コンセント(説明と同意)』や『カルテ開示』などが時代の流れとなり、我国でも癌告知率は急速に増加しています。
一昔前までは「癌は患者さんに隠すもの」というのが常識でした。
それが今、若い医師達を中心に告知しようという気運が高まっていったのです。
・告知して良かった例
公務員Aさん52歳、肝臓癌で入院。落ち着いた人柄で、医師や看護婦の言うことも聞き入れてくれる模範的患者さんでした。
奥様も医療について知識があり、治療にも協力的でした。
告知後「ただ生きるのではなく、意味のある生き方をさせてほしい」という本人の希望が強く、一時退院してからも社会奉仕に尽力され、
5年後に他界されました。ちなみに熱心な宗教信者さんだったそうです。
・告知して悪かった例
有名な寺院の住職Bさん58歳、同じく肝臓癌で入院。
奥様によると「意外に気弱な人なので告知すると心配…」と言われていた。
はたして告知後、勝手気儘が一層つのり、家族の言うことにも耳をかさず、昔大好きだった酒に溺れ、周囲の人々に迷惑がられながら
退院5カ月後に不養生の肝不全で死亡されました。
・告知をめぐる問題点
1. | 癌の告知をして「患者さんが自殺したらどうしよう」というのが医師側の最も多い心配です。 |
2. | 患者本人は告知を希望し、家族は希望しない時。又は、家族内で意見が分かれる時。 |
3. | 家族の強い希望で告知しなかったために患者が医師や病院に不信感を持ってしまう。そのために、時には癌治療そのものの継続が困難になってしまうことも少なくない。 |
4. | 高齢者や子供の癌患者例。 |
5. | 「告知の仕方がまずかった」と家族側から訴訟を起こされるケースが増えている。 |
6. | 一般人の医学知識の向上で、癌を隠しても治療内容などからすぐに察知されてしまう。 |
7. | 早期癌であったのに、告知しなかったために来院しなくなり手遅れになった例。 |
8. | 告知したため自暴自棄になり、あげくの果てにノイローゼ(うつ病)になったり、犯罪に走ってしまった例。 |
9. | 家族以外の親族にまで病名が広がって、遺産相続争いが起こり、患者本人が悲しんだ例。 |
10. | 病院によって(医師によって)告知の方法やルールが統一されていない。 |
・告知で大切なこと
皆様もよく御存知のとおり、我国の死亡原因の第一位は癌です。
今後も癌告知を望む声は高まるでしょうが、まずは日本人の文化や国民性に即した「患者さんや家族の支援体制づくり」が必要だと思います。
何でもかんでも正直に言ってしまえば良いというものではありません。
告知することは容易ですが、一番大切なことは、その後のフォロー(特に心のケア)なのです!