たかはし医院 タイトルロゴ

嘔吐下痢

・嘔吐下痢症とは?
 ある日、急に「悪心(ムカムカ)や嘔吐」、「腹痛」、「下痢」の三大症状で始まります(ただし、3症状全てが揃うとは限りません)。 また、軽い風邪症状や発熱(約半数)を伴うこともあります。 皆さんも1度や2度は経験があると思います。 正に突然に発病し、特に最初の一日は症状が激烈で動けません(特に数回以上の嘔吐を伴うときは死ぬほど苦しい!)。 これが、俗に言う《嘔吐下痢症》、医学的には微生物が原因となる《感染性胃腸炎》と呼ばれる病気のグループなのです。

【A】夏型(主に細菌性の食中毒)
 いわゆる食中毒が主です。 食中毒とは、人体に有害な細菌、化学物質、動植物の自然毒などで汚染された飲食物を食べることで発病します。 7〜9月に集中し、この3ヶ月間で半分以上を占めます。 食中毒の原因食品については半数が特定出来ていません。
 《感染型》として、サルモネラ菌(ネズミ、ミドリガメ)、腸炎ビブリオ菌(生魚、漬物)、 病原性大腸菌のO-157やカンピロバクター菌(動物ペット)があります。
 《毒素型》として、黄色ブドウ球菌(弁当、おにぎり、調理人の手から)、ボツリヌス菌(呼吸困難やしびれなどの重症な神経症状を伴って致命率が高く、いずし、すじこ、ハム、ソーセージなどを媒介とする)があります。
 その他、食中毒には化学物質や自然毒によるものもありますが、 予防は手洗い、長期保存(冷蔵庫の過信)の禁止、加熱殺菌です。

【B】冬型(主にウイルス性の急性胃腸炎)
 他のカゼと同様にウイルスによるものが多く、“おなかのカゼ”とも言われます。 様々なウイルス(ノロ、ロタ、アデノ、エンテロ)がありますが、全国の高齢者施設などで集団感染が相次いだ“ノロウイルス”が有名になりました。 このウイルスに感染すると消化管の粘膜が潰されて水分を吸収できなくなり、あふれた水分が嘔吐や下痢となって排泄されるのです。 ノロウイルスは人の腸内で増殖し、排泄物とともに川や海に流れて2枚貝(牡蠣、あさり、シジミなど)の中に蓄積され、それらを食べて再び体内に入るのです。 例えば、「新鮮な生牡蠣なのに当たった!」という人の大部分がコレだとも言われています。 感染力が非常に強く、患者さんの下痢便(オムツ交換)や吐物に触れた手(タオル、ドアノブ)を介して二次感染を引き起こします。

【C】海外旅行型(伝染病、寄生虫)
 岡山県でも毎月にように発生報告がありますが、その殆どが東南アジアやアフリカからの帰国者です。 消化器伝染病として腸チフス、パラチフス、赤痢、コレラなど…。寄生虫として赤痢アメーバー、 クリプトスポリジウム、ランブル鞭毛虫、糞線虫などがあります。 「もう日本では無くなった病気」というイメージですが、旅行者がドンドンお土産として持ち帰ってくるのです!

・大切なことは?
 嘔吐下痢は多くの病気で認められる症状です。 薬剤性(抗生物質、消炎鎮痛剤、抗ガン剤など)、真菌性(カンジダ、アクチノミセスなど)、 アレルギー性などの胃腸炎でも見られます。 さらに、他の病気が隠れている場合もありますから要注意です。
 まず大切なことは“問診”です。 つまり、発症の仕方、便の性状や回数、食事内容(特に生食)、家族内または集団内の発生、 薬の服用歴、海外渡航歴や帰国者との接触、ペットの飼育などの情報が不可欠です。
 特に、幼児や高齢者では“脱水”に注意が必要です。 軽症ならばスポーツ飲料で様子をみてもかまいませんが、中等症以上ならば(尿量減少、唇の乾燥)点滴や入院が必要になります。

たかはし通信のトップページへ戻る   トップページへ戻る