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カルシウム バイブル

 『カルシウムというと食物の中の成分の一つで、不足すると骨や歯が弱くなるといった程度の理解が一般的である現在、カルシウムが「生命の源」とか「生命の炎」というのは少し大袈裟に聞こえるかもしれません。 また「カルシウム不足の恐怖」という言い方は脅かしすぎに思えるでしょう。 しかし、カルシウムの体内での働きは、ただ骨や歯を強くするだけではなくて、人間の生命を維持していく上で最も重要な栄養素であることがお分かりいただければご納得いただけると思います…』という書き出しから始まるこの書物は、小生の恩師である神戸大学藤田拓男名誉教授の「カルシウムバイブル」(あき書房)です。
 それでは、さっそくこの本のポイントを御紹介することに致します。

【本著の要点】
●妊娠とカルシウム:精子が成熟し、運動が充分にできるためにはカルシウムが必要です。 また、カルシウムが不足すると妊娠中毒症やけいれんが発症したり、規則正しい陣痛が起こらなかったりします。
●子供の成長とカルシウム:カルシウムが骨や歯の成長に不可欠だということは皆さんもよくご存知でしょうが、さらに脳の発育にも重要な役割をしているのです。例えば血液中のカルシウムが少ないと、イライラしたりケイレンやひきつけが起こりやすくなります。
●免疫とカルシウム:体の外から進入する病原体や異物に対する用心棒、または警察にあたるのが免疫であり、ここにもカルシウムが密接に関連しています。
●肩こり、頭痛とカルシウム:筋肉や血管の収縮にはカルシウムが必要です。カルシウムが不足すると筋肉や血管のケイレンを起こしやすくなり、肩こりや偏頭痛が起こるのです。
●糖尿病とカルシウム:カルシウムが膵臓の細胞に信号を送ることによって、初めてインスリンを分泌する仕事が開始されます。実際にカルシウム剤を飲むことによって糖尿病が改善されたという報告もあります。
●高血圧症とカルシウム:日本海側に高血圧や脳卒中が多いのはカルシウムを充分に摂らないからであるといわれています。ナトリウム(塩分)を減らすよりもカルシウムを増やす方が大切だという学者もいるくらいです。現在一番広く使われている高血圧の薬(降圧剤)がこのカルシウム拮抗剤なのです。
●動脈硬化とカルシウム:動脈硬化はカルシウム不足から起こります。骨から溶け出したカルシウムが血管の中にコレステロールを呼び込むのです。つまり、動脈硬化の最初の引き金となるのは、実はコレステロールではなくカルシウムで、次にコレステロールもその役目を果たしますが、最後にまた大量のカルシウムが血管にたまって完成するのです。
●肝臓病とカルシウム:肝臓病の原因にはウィルス、アルコール、薬物など色々ありますが、肝臓が傷つくとカルシウムが肝細胞の中に入り込みます。そして、細胞の外と中のカルシウムの濃度差がはっきりしなくなると、肝臓に限らず全ての細胞は病気になるのです。カルシウムの欠乏によって細胞の中にカルシウムが流れ込みやすくなるのですから、カルシウムを充分にとっていれば肝臓病の進行を予防できる可能性があるというわけです。
●肥満とカルシウム:太り過ぎというのは非常に厄介なものです。一般的に血液中のカルシウムが不足するとイライラしやすくなります。ですから、カルシウムを充分に摂ることによって情緒を安定させ、異常な食欲を抑えることができます。また、カルシウムは腸で、食物中の脂肪と結びついてその吸収を妨げる、いわば脂肪の毒消し役もしているのです。
●痔とカルシウム:痔は、肛門のまわりの血液循環不良や排便の圧力によって起こる出血、痛みなど日本人に非常に多い病気です。カルシウムは肛門部の血液循環を改善し、血管のけいれんを軽くすることにより血の巡りがよくなるので痔が治りやすくなるのです。
●結石とカルシウム:腎結石や胆石はカルシウムの摂りすぎで起こるのでしょうか? 答えはNO! 全くその反対なのです。(カルシウムパラドックス参照)
●ガンとカルシウム:「カルシウムが不足するとガンになりやすい」といわれています。 実際、ガン患者さんの血液中のカルシウムは非常に高いことが多いのですが、これは骨のカルシウムが溶けて血液中に流れ出しやすいからです。
●老化とカルシウム:老化現象をカルシウムの面からみると、長年にわたるカルシウム欠乏の結果として、カルシウムの体内での分布が変わり、なくてはならない所にカルシウムが足りなくなり、あっては困る所にカルシウムがあふれている状態といえるのです。少しオーバーに言えば、カルシウムによって若返りと不老長寿も夢じゃないということです。

【一口メモ】
●カルシウムパラドックス:口から摂るカルシウムが不足すると骨からカルシウムが溶け出して、 血管や脳のような柔らかい組織の中にカルシウムが増え、また細胞の外から中に入り、足りないはずのカルシウムが体内にあふれる現象をカルシウムのパラドックス(逆説)といいます。これがあらゆる病気の元凶となったり、老化の原因となります。
●カルシウムを調節する三つのホルモン:食物として体内に入ったカルシウムは、腸から吸収されて血液の中に入ります。血液の中のカルシウム濃度は極めて一定に保たれていますが、その調節をしているのが、副甲状腺ホルモン、カルチトニン(甲状腺でつくられます)、活性型ビタミンDの三つなのです。

【最後に一言】
●この本は、他の色々な健康グッズを販売するための出版物(いわゆるブック商法)とは違いますので念のため! いずれにしても、カルシウムが大切なことはよくお分かりいただけたと思いますが、だからといって何万円もする高額な健康食品や健康器具にはけっして手を出さぬようにくれぐれも御注意申し上げます。
 平和で豊かな今の日本で、唯一不足している栄養成分がこのカルシウムなのです。毎日少しずつ自然な形でカルシウムを食べるようにしてください。好き嫌いや偏食が特別ひどくない方ならばそれで充分だと思います。

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