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人畜共通感染症≪前編≫

・かわいいけれど…
 近年、世界を脅かしている感染症、SARS(サーズ、重症急性呼吸器症候群)、BSE(狂牛病)、炭疽(テロで有名)、鳥インフルエンザ、O-157(腸管出血性大腸菌)など。 また、以前から有名なペスト、赤痢、マラリア、黄熱、デング熱、ウエストナイル熱、各種の寄生虫症、狂犬病、恐怖のラッサ熱やエボラ出血熱など…。 これらは全てヒトと動物の共通の感染症なのです。 人畜(獣)共通感染症、動物由来感染症、ズーノーシス、ペット病などと呼ばれ、100以上の病気が知られています。
 そして、特に最近の我国で急増しているのです!これらの背景には現代日本人の5つの流行(ブーム)が指摘されています。 つまり、海外旅行ブーム、グルメブーム(ゲテモノ食い、いかもの食い)、自然(アウトドア)ブーム、無農薬(有機栽培=人畜の糞肥料)ブーム、ペットブームです。

●犬:犬は2万年前から人と共に暮らしてきました。 はじめは、人が狩りをしたおこぼれを狙っての接触でした。つい数十年前までは、番犬であったり、家畜であったり、保温の為の生き物だったのです。つまり、ある程度の距離があったから共通感染症がそれほど問題にならなかったのです。 最近は、飼い方の形態がずいぶん変わってきました。愛玩動物としてのみならず、伴侶動物(コンパニオンアニマル)として、室内で家族同然に暮らしを共にするようになりました。
【代表的な感染症】:イヌ回虫症、犬糸状虫症、パスツレラ症、レプトスピラ症、瓜実条虫症、狂犬病、エキノコックス症、Q熱、疥癬、(ネコひっかき病)、皮膚糸状菌症、サルモネラ症

●猫:猫の歴史は犬よりも新しく、4000年前のエジプト時代からといわれています。 当時の猫は、穀類貯蔵庫を荒らすネズミを駆除するために飼われていました。 また、エジプトの壁画に描かれているように、神聖な動物として崇められていました。そのエジプトの猫はシルクロードを伝わり、仏経の伝来とともに日本に輸入されました。 船に乗せられた理由は経典がネズミにかじられるのを防ぐためということです。 猫はペットとして犬とともに家庭で普通に飼われている動物であり、また、住居周辺にはいわゆる野良猫も多数存在するのです。
【代表的な感染症】:ネコひっかき病、パスツレラ症、瓜実条虫症、ネコ回虫症、Q熱、疥癬、(狂犬病)、皮膚糸状菌症、サルモネラ症、トキソプラズマ

●鳥:ニワトリの起源は約5000年前のインドから東南アジアにかけての、人が農耕生活を送るようになった場所に生息していた野鶏との出会いから始まりました。 はじめは定刻通りの鳴き声や闘鶏の結果で吉凶を占ったりしていました。やがて肉や卵を生産するニワトリとして飼われるようになったのです。 一方、カゴの鳥といわれるインコ、オウム、文鳥、十姉妹などの歴史は浅く200年くらいで、あくまで観賞用でした。 我国では年間20万〜30万羽の鳥類がペット用として輸入されています。
【代表的な感染症】:オウム病、鳥インフルエンザ、クリプトコックス症、Q熱、サルモネラ症、クラミジア感染

●ウサギ・ハムスター:ウサギはもともと家畜として2000年ほど前の地中海で飼われ始めました。 日本には16世紀頃オランダから渡ってきました。一方、ハムスターは1800年代に発見されて、はじめは実験用として注目されました。ペットとして飼われはじめたのは50年程前からです。 ハムスターは人気が高く、その飼育頭数では犬、猫に次ぐといわれています。ウサギやハムスターは、鳴かない、散歩がいらない、フワフワしているということから、女性や一人暮らしの人に人気です。
【代表的な感染症】:皮膚糸状菌症、パスツレラ症、野兎病、疥癬 特に子どもの夏風邪の代表として有名なのが、【咽頭結膜炎】(プール熱とも呼ばれる、原因は各種のアデノウイルス)、【ヘルパンギーナ】(のどの痛み、高熱、原因はコクサッキーウイルスA群)、 【手足口病】(エンテロウイルスなど各種)の3つです。 いずれも、呼吸器症状(はな、のど、せき、たん)は少ないです。

・共通感染を防ぐために
 日本は、いつのまにか輸入動物大国になってしまいました。 アメリカや中国、イギリス、フランスなどは自国の生態系を守るため商業用動物の輸入を禁止しています。 どうして日本だけが時代に逆行しているのでしょうか?最近ではペットとしての爬虫類(ミドリ亀、イグアナ)によるサルモネラ症も話題になりました。
 ペットからの共通感染症を防ぐために『過度の接触を避けるように』と言われています。しかし、動物好きには動物とのスキンシップは欠かせません。 では、そのボーダーラインは?『友達と同じ感覚で接してください』つまり、友達とは手をつないだり、軽いスキンシップはしますが、口移しでご飯を与えたり、年中寝室まで共にしませんよね。 一緒に遊んだ後は必ず手を洗ったり、うがいをして下さい。
 ペット愛好家でなくても、公園の砂場や亜熱帯の砂浜は各種動物の糞尿で汚染されていることが多いので注意して下さい。また、火を通していない珍味?(生の肉、肝臓、魚介類など)は食べない心がけが必要でしょう。

≪後編≫では代表的な感染症を分かりやすく説明します。

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