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人畜共通感染症≪後編≫

≪前編≫に続いて代表的な共通感染症を説明します。

●パスツレラ症:パスツレラ菌は健康な犬(50%)や猫(100%)の口の中に存在する菌(常在菌)であり、噛まれたり、ひっかかれたり、口移しやキスなどで感染すると赤く腫れて化膿します。時には敗血症や髄膜炎などによる死亡例も報告されています。

●レプトスピラ症:レプトスピラはスピロヘータというラセン状の菌です。昭和10年頃には毎年1000人が死亡するくらい 危険な感染症(発熱、黄だん、腎炎)でした。主にドブネズミが感染源になっていますので、それを食べる(野生)動物も危険です。

●エキノコックス症:エキノコックスは長さ数ミリの小さな寄生虫です。 流氷に乗って千島列島からやってくるキタキツネによって北海道に侵入したといわれています。人が感染すると数年から数十年かけて肝臓内で増殖して(寄生虫性のガンともいうべき)肝不全を起こします。

●イヌ・ネコ寄生虫:寄生虫には様々な種類があり、再び増加中です。例えば回虫症は、動物糞の虫卵が口から入ったり、 生肉や肝臓の刺身を食べたりして感染し、幼虫は人の肝臓、目、神経など全身の臓器に移動して症状を引き起こします。また、皮膚から直接侵入する鉤虫は、東南アジア旅行者が砂浜(動物糞汚染)を裸足で歩いたり、 寝そべって日光浴をして感染するケースが増加しているのです。

●疥癬:昆虫の仲間であるヒゼンダニ(人の肉眼では見えない)が皮膚から浸入して発症します。 皮膚にトンネルを作り、非常に強いカユミが特徴です。時に医療施設で集団発生します。

●ネコひっかき病:その名の通り、主に猫にひっかかれたり、噛まれたりして、バルトネラ菌で発病(発熱、リンパ節の腫れ)します。 ちなみに、犬やノミから感染しても「猫ひっかき病」と呼ぶのです。

●皮膚糸状菌症:皮膚にカビ(真菌)が生える病気で、かゆみ、発赤、脱毛などを引き起こします。 犬、猫、うさぎ、ハムスターなどが感染動物です。

●サルモネラ症:サルモネラ菌は広く環境に分布しており、病原性大腸菌、腸炎ビブリオとならんで3大食中毒症として知られています。 特に亀では50〜90%も感染しているそうです。色々なペットを触ったあとは直ぐに手を洗うことです!

●狂犬病:日本では約50年間発生していないので危機意識が薄らいでいますが、近隣の北朝鮮、ロシアなど海外の殆どの国では現在でも犠牲者が後を絶たず、 世界では毎年4〜5万人が死亡しているのです。 犬だけではありません!猫、アライグマ、スカンク、キツネなど全ての哺乳類が感染動物となります。初期にはカゼ症状から始まり、急性脳症などでほぼ100%死亡する恐ろしいウイルス感染症です。

●オウム病:病原体はオウム病クラミジアで、幅広く鳥類に感染しています。日本で年間300〜3000人が発病し、うち1人が死亡しているそうです。 最近島根県で集団発生しましたが、ペットショップを覗いただけで感染した例もあります。

●クリプトコックス症:鳩の糞の中に存在するクリプトコックス菌が原因です。 体力、抵抗力の落ちた人では肺炎や脳炎を起こしますので、鳩には近づかないほうが無難です。

●Q熱:コクシエラ菌による謎の多い病気で、様々な動物や鳥が感染します。 NHKのクローズアップ現代でも取り上げられましたが、不定愁訴症候群、不登校、慢性疲労症候群などとの因果関係も調査中です。

●トキソプラズマ症:寄生虫の一種である原虫による感染症です。 猫が感染動物で、妊婦や抵抗力の落ちている人は重症化します。アメリカではエイズ患者の30%がこのトキソプラズマで死亡しているとか。

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